ぬか床にっき

自由の身になったのをきっかけに、30年来の憧れであるぬか床生活を始めました。幻のばあちゃんの味を目指しますが・・・

2021.6.12

筍にも 胡瓜にも ラディッシュにも

等しく朝日は 降り注ぐ

 

ぬか漬け朝の

ぬか漬けには、晴れた朝が似合う。

 

キッチンの窓から差し込む朝日の中で、

一晩眠っていた野菜たちを寝床ならぬぬか床からそっと起こし、

冷たい水で丁寧にぬかを洗い流す。

晒しの布巾で水気を切り、小気味よいまな板の音を聴きながら切っていく。

 

「今日はどういう形に切ろうか?」 「どの皿が似合うかな?」 「どう盛り付けよう?」

無限の組み合わせの中から、直感とインスピレーションで形を作っていく。

 

朝の30分の時間の中で

季節を感じ 土の命を慈しみ 生きているぬか床と対話し育て

生活をアートとして楽しんできた日本人としての歴史を体現し 感謝し 楽しむ。

 

浅漬けでサラダ感覚に 深漬けで酒の友に 唐辛子を多くして夏場の食欲増進に

きゅうりのぬか漬けをスライスしてバゲットに挟んでも絶品

野菜の命と微生物の営みを同時に戴く

みるみる腸が元気になっていく

 

大根の葉の付け根 かぶの葉っぱ ほうれん草の根っこ

いつもは捨てている所が特に美味しくなる

ここは植物の成長点、栄養の宝庫でもある

自然に野菜を慈しむようになる

野菜室で駄目になっていく事もない

ただぬか床に入れてやれば良い

 

あちこちから寄せ集められ米糠に入れられたぬか床の材料たちが

一日一日と馴染んでいき 調和し お互いを補い合い 成長していくのを見る楽しみ

時には水が出過ぎたり 表面に白かび(悪いものではない)が生えたり

かき回すのを忘れて不安になったり

 

うちのばあちゃんも、こんな風に毎日ぬか床と会話してたんだな。

昔から、「火事になったら真っ先にぬか床を抱いて飛びだす」と良く言われるのも宜(むべ)なるかな。

 

あの夏の日に黒かびが生えて

実家のぬか床50年の歴史は終わった。

それからまた新しいぬか床の歴史が始まったけど

あの味は決して戻らなかった。

 

ぬか床を育て初めて8ヶ月。

時にはとんでもなく旨かったり、とても食えた物じゃなかったり(でも責任持って食べる)。

炒りぬかから生ぬかに変えた時の衝撃。こんなに違うんだ!

一番好きなのがぬか床材料の大豆だったり。

これからどんな歴史が このぬか床に刻まれていくんだろう?

 

ぬか床を初めて良かったことは無限にあるが

悪かったことは何も思い浮かばない。

手間そのものが楽しみに変わる。

 

私の朝のリズムは

ぬか床で刻まれ始める

まな板の軽やかな音を聴きながら

体の節々が目覚めていく

 

新しい家族を迎えること

新しい生き方を始めること

 

ぬか床を持つことは

「それくらいの、何か」である。