技術で着る服

ふだんから着物を着て過ごしています。ほぼ毎日、着物。

奥方様でもなんでもないので、木綿やウールの着物に半幅帯が定番スタイル。絹はお出かけ用のおしゃれ着です。

お金のかかる趣味だと思われている部分もあります。苦しくないの?と聞かれることもあります。

どっちもはずれ。

 

着物初心者の頃はもっぱらリサイクル着物でした。しかも当時住んでいたのは名古屋。名古屋には安くて品揃えのいい古着屋さんが、たくさんあるのです。骨董市も強い味方です。洋服並みか、もっと安い値段で着物を買い、着なくなったら売り、少しずつ慣れていきました。

着付けに慣れるまで悪戦苦闘。実は今でも、よそ行きの柔らかものを着るとき、格好良く決まらなくて手こずることが時々あります。

 

 

洋服と和服の決定的な違いは、どこに技術を要するか、だと思います。

洋服は各パーツを曲線で切り縫い合わせ、体に沿う形に作られます。形も様々です。服に袖を通すだけでスタイルが決まります。

一方和服は反物を直線で切り分け、縫い代の幅でサイズを調整して縫い合わせます。布の切り屑がほとんど出ないのです。直線縫いで形はみんなほぼ同じ。それを立体である体に沿わせ、紐をかけて結びます。

洋服は、作る過程に技術を施し、着るための技術が不要になるよう作られています。サイズもぴったり。着るのは楽ですが、体型が変わると着られなくなったり似合わなくなったりします。体型を気にしてダイエットに励む人が多いのは、このためでしょう。

一方和服は直線縫いのぺったんこ。それを立体曲線の体に着付けるのだから、それなりの工夫が必要です。「着付けが難しい」というのは、そこなのです。着る技術が求められる。

 

着物には厳密なサイズ設定がありません。誂えでも大体の寸法で仕立てられ、多少体型が変わっても支障なく着られます。現に私は、初めて着物を誂えた時から20㎏近く(!)太ったのですが、当時の着物を今でも快適に着ています。ゆったりめに仕立てたからでもあります。でも細かった当時、その着物を着てブカブカだったわけでもありません。体に深く巻き付けて細いシルエットになるよう着ていました。

 

日本の着物は、基本的に一枚の布なのです。布をどう体にまとうか、その技術を着る者が会得する。そういう衣服です。そして一度その技術を身につけたら、普段着でも礼服でも着ることができる。

インドのサリーなんか、本当に一枚の布ですもんね。

 

着物の魅力は布の魅力。服に従って着るのではなく、体合わせて纏う主体的な衣服なのです。