これを読めば放射線通。400枚分を10分で。

そもそも、「放射線」って何よ?

「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」環境省 より

遠い記憶を探って物理の授業を思い出して見て下さい(ついでに初恋の事を思い出しても構いませんが、理解速度は極端に遅くなりますのでご注意下さい)。

物質は「原子核」と呼ばれる、「陽子」と「中性子」でできた塊と、その周りを惑星みたいにぐるぐる回っている「電子」とで出来ています。

 

ちなみに電子の軌道の大きさをリビングルーム位(経済的格差は無視します)とすると、原子核の大きさは髪の毛の太さ程度(毛髪量の寡多は無視します)です。という事は原子の中身は「スッカスカ」で、ミクロの目で見れば恒星系の集まりみたいなものです。我々はこの肉体が何か実質と重量を伴って存在しているように感知していますが、実際は途方もない「無」の空間に原子や電子が点としてポツン、ポツンと存在しているだけなのです。

私も無、あなたも無。の空間同士が優劣を比べ合って騒いでいるのが現代社会です。そう考えると、我々が日常悩んでる色んな事が、一気にアホらしくなってきませんか?

 

・・・脱線しすぎました。戻ります。

陽子の数で物質名は決まりますが、同じ名前の物質でも中性子の数が違うものがあり、それによって安定的な原子と不安定な原子が出てきます。例えば同じセシウムでもセシウム133は中性子78個で安定した原子、セシウム134は中性子79個で不安定な原子となっています。

この不安定な原子を「放射性物質」と呼び、放射性物質は「放射線」を放出する事により自身の不安定さを解消しようとします。この放射線を出す「能力」の事を「放射能」と呼んでいます。巷では「放射線」を「放射能」と呼ぶ事が多いですが、「セシウム134からは放射能が出ている」と言うのは誤りで、「放射が出ている」と言うのが正確な表現です。

放射線の種類は?

放射性物質が自身の不安定さを解消する方法は主に次の4つです。

 

1.α(アルファ)線を放出する

2.β(ベータ)線を放出する

3.γ(ガンマ)線を放出する

4.中性子線を放出する

 

いずれも原子核から飛び出した放射線(ちなみにX線電子から飛び出した放射線です)で、それぞれ組成と性質が違います。

 

α線は原子核から2個の陽子と2個の中性子の塊(=ヘリウムの原子核)が飛び出したもので、大きくて重い(β線の約7,300倍の重さ)ので空気中では1〜10cm程度しか飛びませんし、紙や皮膚(の表面の角質層)で止まってしまいます。外部被曝では問題になりませんが、口や傷口から入って内部被曝した時はDNAに大きな損傷を与える怖い存在になります。

 

β線は原子核からマイナス電荷を持った電子が飛び出したもので、α線より小粒で軽い為、紙等は通り抜けますが薄い金属板などで止める事が出来ます。

ここで鋭い人は、「マイナス電荷の電子??原子核にあるのはプラス電荷の陽子だろ?なんで電子が飛び出すの?どこに電子が隠れてたの?」そう思いますよね。実はこの電子は中性子の中に隠れていた電子で、マイナスの電子が飛び出した中性子はプラスの陽子に変わります。

β線は空気中を数メーター飛び、皮膚や皮下組織に影響を与える可能性があり、高い線量では火傷の様な症状が出ます。内部被曝においてはα線程危険ではありません(内部被曝の力はα波の1/20として計算されています)。

 

γ線は原子核内の過剰なエネルギー光(電磁波)として飛び出したもので、放出後も放射性物質としての組成は変わりません。光は光子と呼ばれる粒としての性質と電磁波の波としての性質の両方を持っています。

γ線はβ線より浸透力が強く、厚い鉛の板等で止まります。空気中を数十m〜数百m飛び、深部の臓器・組織まで達しますので、外部被曝で主に問題になるのはこのγ線です。

 

中性子線核分裂等により原子核の中性子が飛び出したもので、電荷を持たないのが特徴です。これは水やコンクリート等水素を含む物質で止まり易くなります。

この核分裂のエネルギーを使用して電力を作るのが原子力発電です。

一般人が中性子線を浴びる事はほぼ無いので、これは防護対象から除いて考えたいと思います。

 

まとめて言うと、原子核から飛び出した大きな粒α線中性子線小さい粒β線γ線電磁波のどちらの性質も持っています。

これらはそれ自体に毒性や危険性がある訳ではなく、飛び出した時に持っているエネルギー(つまりイキオイ)が大きい為、様々なものとぶつかって害を為します。車自体に危険性は無いけれど猛スピードで目隠し運転をしたら危険ですよね。それと同じ事です。

あとさー、放射線の単位って訳分かんないんだけど。ベクレル?シーベルト?

ベクレル(Bq)は、放射能そのものの強さ表し、シーベルト(Sv)は人が放射線を浴びた時に人体に受ける影響の大きさを表したものです。また、BqからSvへ換算する際にはグレイ(Gy)という単位が出てきます(また変な単位が出た!)。

一見すごく面倒に思えますが、この単位を理解すると放射線の持つ様々な性質や天文学的数値の表記法等が分かって結構面白いと思いますよ。

 

※ここからは脱線しまくりで行きます。

※※人生の醍醐味は脱線にあります。(何を言ってる)

 

まずBqですが、これを理解すれば「放射線そのもの」が一体何なのかが分かります。

先程、「放射線とは原子核から飛び出したものである」としましたが、1Bqとは「1秒間1個原子核変化(これを壊変、つまり壊れて変わる、と呼びます)する量」です。Bq単独で使われる事は稀で、大抵はBq/kg(主に飲食品に対して使われる)、Bq/㎡(主に地面に対して使われる) 等各単位当たりのBq数として扱われます。

 

さて、第1次の脱線に入ります。Bqを実例で考えてみましょう。

 

今、福島の地面を汚染している主役はセシウム137(Cs-137)とセシウム134(Cs-134)なので、これをモデルに考えてみます。

震災から約20ヶ月後の平成24年11月16日の古民家のある辺りのCs-137の放射能を大体1000kBq/㎡(=1MBq/㎡)と見ると、ここの地面1㎡当たり1秒間100万個のCs-137の原子核の壊変が行われていた事になります。

 

ピンと来ないなあ。それってどんくらいの量なの?」

 

はい、原子核100万個と言われてもピンと来ませんよね。では原子100万個の「重さ」で考えてみましょう(原子の重さの殆どは原子核の重さなので、電子の重さは無視できます)。

1gのCs-137の放射能量は3.2TBq(3兆2,000億Bq)なので、比例換算すると100万個の原子の重さは1M/3.2T•g=0.000000313g=0.313μg(マイクログラム)です。双葉町の面積は51㎢なので、全体がこの濃度とすれば、0.313μg/㎡×51㎢=0.311×10⁻⁶g/㎡×51×10⁶㎡≒16g、双葉町全体約16gのCs-137がばら撒かれた事になります。ピン!と来ましたか?

 

「おー、何となく! 放射性物質って怖いな。たった16g町全体が侵されちゃうんだ!」

 

その通りです。ご忖度ありがとうございます。

たった16gですが、その中には約48.3T個(48兆3,000億個)の原子が含まれています。

この様に、放射性物質に対しては私たちの通常の感覚は通用しません

 

ちなみに、チェルノブイリ原発事故以後のドイツ全土の平均汚染値は約3000Bq/㎡で、これから計算するとドイツ全土(357,400㎢)に約500gのCs-137がばら撒かれた事になります。 日本の領土(378,000㎢)とほぼ同じ面積にたった500g!想像もつきませんね。

 

ここで第2次脱線・その1に入ります。チェルノブイリと1Fの放射性物質の噴出総量をみてみましょう。

2011年4月12日のNHKニュースによれば、

 

チェルノブイリ:520京(けい)Bq

1F:約50京Bq

(原子力安全・保安院の試算で37京ベクレル、原子力安全委員会の試算では63京ベクレルと推定、間をとって約50京Bqとしました)

 

 

大雑把に言うと1Fチェルノブイリ1/10の規模ですが、チェルノブイリ事故と合わせて史上2例しか起きていない最高レベル7の原発事故でもあります。また、チェルノブイリ事故は社会主義国にありがちな極めてずさんな運営が原因の完全な人災ですが、1F事故は大規模地震により半ば不可避的に引き起こされたものです。

 

ここで第3次脱線に入ります。

 

・・・一般的に馴染みがあるのは国家予算で良く出てくる「兆」までですが、兆の1万倍の単位は「京(けい)」となります。

日本人男子の場合、あまり聞き覚えの無いこの単位を知っているかどうか、またこの単位を「けい」と呼ぶか「きょう」と呼ぶかである程度年齢が推察されます。 

最後までご視聴頂いた皆様、大変ご苦労様でした。

一部の方の「男の子魂」が遠い記憶より蘇り、「一、十、百、千、万、億、兆、キョウ!!」と大声で歌ったとしても、私は「同士!」と思うだけです。

 

さて、この520京、50京を別の表記で表すと、

 

チェルノブイリ:520京Bq=520×10 ¹⁶ Bq=5200×10¹⁵ Bq=5200P(ペタ)Bq=5.2E(エクサ)Bq

1F:50京Bq=50×10¹⁶ Bq=500×10¹⁵ =500PBq

 

となります。 

P(ペタ)」は「T(テラ)」の1,000倍の記号で、日本語では1,000兆倍になります。

 

ここでまた第3次脱線します。脱線こそ人生の醍醐味!(何を言ってる)

 

日常の金額表記や学問の世界では、日本と西洋の命数法で混乱しますね。西洋の区切りは3桁日本の区切りは4桁

日本は漢数字の命数法(万、億、兆、京)で読んでいる癖に、表記においては西洋と同じ様に3桁毎にコンマ(,)を打っています。日本人が数字を見てそれを言語化する際には上記の計算の様な複雑な思考過程を経なければなりません。1日のうち日本国内においてどれだけの人が何回3桁コンマと格闘しているかを考えると相当量の思考が無駄に為されている訳で、もしこれを脳の消費カロリー数に換算したら天文学的カロリー毎日無駄に消えているのでは無いでしょうか?

 

日本は4桁毎にコンマを打っていれば全く混乱無く事務が進むのに(実際小学校では4桁コンマを教える所もある様ですが、社会に出れば3桁コンマの反乱、じゃない氾濫に襲われます)、そうしない事に対してすごくストレスを感じているのは自分だけでしょうか?

 また、そこに日本人の持つ西洋コンプレックス(西洋ありがた主義)も潜んでいる気がして、何ともやり切れない気分になります。

改めて、

 

チェルノブイリ:520京Bq=520×10 ¹⁶ Bq=5200×10¹⁵ Bq=5200P(ペタ)Bq=5.2E(エクサ)Bq

1F:50京Bq=50×10¹⁶ Bq=500×10¹⁵ =500PBq

 

これを我々が実感しやすい「重さ」に変えてみます。仮にこれが全てCs-137 によるものと仮定すると、

 

チェルノブイリ:1,625kg

1F:155kg

 

のCs-137が原子炉から放出された事になります。

・・・だんだんピンときつつありますか? もう寝ちゃってますか

ここまで読んで頂いた皆様はありがとうございます。

毒を食らわばSARAまで。もう少しお付き合い頂ければ環境省の役人ともバトルできますので頑張って下さい。

 

 

この重さをどう捉えるかは各人それぞれですが、チェルノブイリ事故の汚染は地球の北半球全体に及び、事故から10日後には日本でも雨水から放射性物質が観測されました。たった1.6tの放射性物質で。

 

あらら、いつの間にか講義時間10分を超えてしまいました。この続きは次章で。