トーキョートキョート 1

原宿駅のウラとオモテ

東京に行ったら大抵は原宿に寄る。

「全国の中学生達の聖地に、50過ぎたオッサンが何をしに行くのか? 気持ち悪い事甚だしい! 即刻止めよ。」

とお思いでしょうが、実はラーメンを食べに行くのであります。

 

九州じゃんがららあめん。雑誌の首都圏ラーメン屋ランキング1位を維持していた事もある、スッキリ豚骨にガッツリ具材の組み合わせで全国のオトコ達を魅了し、オンナたちに敬遠されている店である。ちなみにウチのヨメも行きたがらない。

ここの角肉は長崎の「しっぽく料理」の製法で作られており、芯までとろりと柔らかく、豚肉好きにとってはたまらない逸品である。私はほぼこれ目当てでここに20年程通い続けている。

朝食抜きで腹を減らし、胃袋を臨戦態勢に持っていく。入り口で並んでいる時はもう頭の中には角肉の事しかない。

「じゃんがら全部入り、角肉ダブル!」

空きっ腹にいきなり油物と言う悪魔の様な食べ方だが、ここに行った後はリカバリーで3日程ダイエット生活に入る事になる。快楽には必ず報いがあるのだ。

 

目の前に「それ」がやって来ると世界は自分とどんぶりだけになり、どんぶり上のフルコースが始まる。

前菜がシナチク、スープがワイン、そしてメインディッシュの角肉、麺は付け合わせのパン、終盤は明太子と紅生姜をスープに溶かして口直し、コップの水は食後のコーヒー、といった所か。

「猫にチュール(旧世代語翻訳:モンプチ)状態」でフガフガ言いながら食べるのがじゃんがららあめんの正しい作法である。オンナ達に嫌われるのも無理はない。デートでここに来れる様な仲になればそれはもう結婚も間近と見て良いだろう(言い過ぎ)。

 

さて、胃袋に豚肉を満たして生物的本能を満足させた後、人間らしさを取り戻すべくいつもの様に若なかま瞑想班の友人達とZoomで雑談する。道端のレンガに腰掛けて雑踏を目の前に見ながらのZoom会議も中々面白い。これを仙台とか塩竃でやったら通行人から白い目で見られるだろうが、東京の人々の目は最初から白いので誰も気に留める者はいない。都会の良い所である。

 

「そこから神宮の森が見えますか?」と聞かれる。そういえばあの森は明治神宮だったな、と思い出すと、何と自分は20年も原宿駅で降りているにも関わらず一度も明治神宮を参拝した事が無い事に気づいた。

やばい。伊勢神宮だけお参りしておれば良いと言うものではない事に初めて気づく。このままでは日本国民として天皇陛下に合わす顔が無い。そもそもお会いする機会自体一生無いと思われるがそれはここでは問題としない事とする。

 

原宿駅を横目に神宮橋を渡り神の敷地に一歩足を踏み入れると、真夏のアスファルトから冷房の効いたビルに入った様に辺りが静寂に包まれた。原宿駅前の雑踏が遥かな過去の様に思える。駅の裏にこんな世界が広がっていたとは・・・

 

「ごめんなさい!」

心の中で謝った。何に謝ったかは自分でも良く分からない。

巨大な鳥居を潜って参道に入ると、そこは神気漂う清澄な空間が広がっていた。

つづく