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2nd Impact

2度目の衝撃。

 

「あれっ?」

 

盛り付けの最中、切れ端を一口食べてみる。通りかかったヨメにも一口。

「うん。いいんじゃない?」

「亜凛塩竃竜宮茶会」の最中だったので、朝食を食べに来た徳島からの若なかまも、

「昨日までとは違う味ですね。グレードアップした感じ。」と言う。

 

ぬか漬けに「実山椒」が良いとはあちこちで聞いていたが、これほど違うとは思わなかった。

昨日までのぬか漬けを田舎料理とすると、今日のはちょっとした料亭の一品くらいの完成度になっている、と一人で悦に入る。

実は数日前から実山椒は入れていたのだが、ほんの10〜20粒しか入れなかった。その強烈な香りに押されて、「これはあまり入れない方が良いのでは?」と思いセーブしていたのだ。

 

その程度の量だと味に影響は殆どなく、「こんなもんか?」と思ったが、この日の前日に「まあ、香りが付き過ぎても1週間で戻るだろう。亜凛組のみんなも、そろそろ違う味のバリエーションが欲しくなる時かも知れない。」と、思い切ってぬか床の表面が隠れる位入れてみた。

その結果が「あれっ?」であり、「いいんじゃない?」であり、「グレードアップした感じ」である。

ぬか漬けの味の深みを損なう事なく、ぬか臭い匂いが削ぎ落とされ、口に含むと山椒の清澄な香りがほんのりと鼻に抜ける。粉山椒は時折入れていたが殆ど味に影響は無かった。その粉が実になっただけで、この効果。

 

「実山椒すげぇ!」

 

この衝撃は、ぬか材を煎りぬかから出来立ての生ぬかに変えた時以来と言っていい。

ぬか漬けを初めて2ヶ月程経った頃、毎日自家精米している良い米屋を見つけ、「その日の生ぬか」を大量にぬか床に足してみた。

当時本やネットを読み漁り、「ぬか床に良い」と言われるものは手に入る限り入れてみたのだが、肝心のぬかは通販の煎りぬかのままだった。

それなりの味に仕上がってきて、「俺も結構やるじゃん!」と孤独にほくそ笑んでいたのだが、この「生ぬかのぬか漬け」を食べた時、「今までのぬか漬けは何だったんだ・・・」と遠くの塩釜港をみながら思ったものだ。

 

今回も一口食べてみて、キッチンの窓から見える塩釜港の断片をみながら、

「今までのぬか漬けは・・・」と呆然としていた。

幼い頃から「漬け物嫌い」の母親の元で育ち、大学通学の為に東京に出てきた時に初めて「べったら漬け」を食べてみた程度の漬け物人生しか送っていない我がヨメは、基本的に漬物に対して積極的ではない。「あれば食べる」程度である。

そんなヨメだから、私のぬか漬けに対しても斜め45°から視線を照射して、「あれば1〜2口は食べてみる」程度の扱いであった。ぬかの香りに慣れない者にとっては、深漬けの香りなどは癖があって気になるものだ。

 案の定、一月ほど経過した時点で「もう飽きた!」と宣言し、基本的に殆ど食べないが、特別出来の良い時だけ沢山食べるという「言行不一致作戦」に入ったのである。

 

そのヨメが、この実山椒の効いたぬか漬けは積極的に食べている。これは我が家の食卓における大きな進歩である。

これで作り過ぎたぬか漬けをげっぷと共に食べる苦労も無くなる筈だ。めでたい事である。