基礎知識編1:世界のなりたち

神様だって、退屈には勝てなかった。

 

むかしむかし、と言ってもまだ「時」自体が始まっていなかったむかし。

あるところに、と言ってもまだ「空間」自体が無かったころ。

 

神様がおりました。

 

神様は完全で完璧でした。何しろ神様ですから。

 

完全です。

完璧です。

言うことありません。

 

おわり。

 

「・・・・・。」

 

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・退屈だなぁ。」

 

あまりに完全で完璧なので、神様は飽きてしまいました。おぉ、神よ!

 

「・・・・・・そうだ、『苦しみ』というものを創ってみよう! 面白そうだし。」

 

そう、それまで、「苦しみ」というものは存在していなかったのです。

ただ、「永遠の喜び」しかありませんでした。

 

でも、考えてみて下さい。

「永遠の喜び」しかなかったら、「自分が『永遠の喜び』の中にいる」ということをどうやって知る事ができるでしょうか?

 

それで、神様は「苦しみ」というものを創ろうと思いつきました。

神様は、苦しんでみたかったのです。

ちょっとマゾっ気があったのかもしれません。

 

「でも、俺は完全で完璧だから、このままじゃあ苦しめないなぁ。」

 

神様の1人称は「俺」なんですね。驚きです。

 

「そうだ、『苦しみ』を味わうために『世界』を創ればいいんだ。」

 

・・・あのー、神様?

それって順番が逆な気がするんですけど・・・・。

 

「ヘンーシンー!! 世界チェーンジ!!」

 

あらら。神様ノッてますねぇ。肉体が無いくせにポーズまで付けちゃって・・・・。

 

 

 

 

どーーーーーーん!!!!

 

 

 

神様の一部が、「時間」になりました。

神様の一部が、「空間」になりました。

神様の一部が、「物質」になりました。

 

・・・こうして、神様は自分の一部を世界に変えてしまいました。何しろ神様ですから。

 

神様は、世界になりました。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

・・・・・何か、おかしい?

 

 

「神様は、世界を『創った』んじゃないの?」

 

あー、それね。

神様は「全て」なので、「神様以外のもの」は創れないんですよ。

そんなものがあったら、「『全て』以外のもの」が存在する事になっちゃいますよね。

そうなったら、「全て」が「全て」じゃなくなっちゃうじゃないですか。

 

ドゥーユーアンダースタン?

オーケー?

 

・・・・・ライト!

 

「さあ、これで苦しめるぞ!」

 

神様はウキウキしながら「苦しみ」が来るのを待ちました。

 

 

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 (・一個=1億年)

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? おかしいぞ? 『苦しみ』が来ないなぁ?」

 

 

神様は自分の一部を「世界」に変えましたが、完璧な神様が創っただけに、その世界も完璧にしてしまったのです。

 

凡ミスですね。でも許してあげて下さい。

何しろ、それまでは「完全」「完璧」しか存在していなかったんですから。

「不完全」というものを創るのは大変な作業だったのです。

 

そういう訳で、神様は間違って「楽園」を創ってしまいました。

あ、正確に言うと、自分の一部を「楽園」に変えてしまいました。

 

そこでは全ての存在たちが調和し、世界は完全なリズムを持って流れていました。

 

例えば「地球」という星では、海や山や森やあらゆる生き物たちが完全に調和して存在していました。

彼らは様々に形を変えながら「時間」の中を流れていきましたが、誰も「苦しむ」事はありませんでした。

皆自分たちの「本質」が神である事を知っており、この世界においてはただ「形」だけが移り変わっていく事を知っていたからです。

 

生まれるのもただの「形」、色々な困難の中で生きていくのもただの「形」、死ぬのもただの「形」、その背後にある「神」としての「自分」は相変わらず完全で完璧でした。

なので、皆何があっても「苦しむ」ことがなく、「自分の本体が神である幸せ」は壊れることがありませんでした。

 

 

・・・・・。

 

 

・・・・・・・神様ぁー、これじゃダメじゃん!

みーんな「自分は神だ」って知っているから、みーんな幸せだよー?

 

「ありゃりゃ。これじゃ苦しめんな。ねぇ、どうしようか?」

 

あんた神でしょ? そんくらい自分で考えて欲しいなぁ。

 

「・・・あ、そうだ! いいこと思いついた!」

 

何?何?

 

「ここではみんな『自分が神だ』という事を知ってしまっておる。ならば俺は、『自分は神ではない』という間違った意識を持つ者を作ろう。」

 

ふーん。どうやって?

 

「これは面白いぞ。まずはな、『記憶』という仕掛けを創るんじゃ。」

 

えらい抽象的な創造やな。

 

「まあ聞け。『記憶』ってやつはな、この世界で唯一『今、ここにないもの』なんじゃ。そしてな、この『記憶』を保管・取扱いする装置として、『知性』ってやつを創ってやる。」

 

ふーん。

 

「そしてな、『知性』を使って『記憶』をもてあそぶ事が大好きになる仕掛けを創る。それが『エゴ』じゃよ。これでカンペキ!」

 

カンペキ!って言われてもなぁ。

 

「いいか? 今のやつらが『永遠の喜び』の中にいるのは、みんな『今、ここ』にいるからじゃ。

現実には神しかおらんから、現実である『今、ここ』を知覚していれば自分が神だと気付き続けるしかない。

でもな、『記憶』という『架空の世界』の中におれば、『今、ここ』に気づかなくなって、『自分が神だ』という事をうまーく忘れる事ができるジャロ?」

 

なんで「ジャロ」がカタカナなの?

うそ・おおげさ・まぎらわしく聞こえるよ。

 

「そしてな、その『知性』と『エゴ』を、最近現れ始めた『人間』ってやつに入れてみようと思うんじゃ。」

 

あー、最近地球の「楽園」で幸せそうにしているあいつらね。

 

「そうじゃ。そして俺は、あいつらを使って憧れの『苦しみ』を味わうんじゃ! ヒッヒッヒッヒッ!」

 

神様にしては下品な笑い声やなぁ。そしてやっぱりこの人、じゃないこの神やっぱマゾやわ。

 

「・・・お前、何で関西弁?」

 

うぉ! 神にツッコまれた! 

つづく