ナカマとサケとセッションと 3

 

マジか!? オレらだけのオンガク。

二人が「隠れ家」に来て3日目、もう一人の「バカ(尊敬語である!)」が合流した。

 

カメラマンの寺岸宏一さんだ。彼とは中本誠司現代美術館で偶然に出会い、このHPの制作も依頼した(現在は彼の手を離れている)。

去年の年末の大忙しの時に無理矢理引き受け、突貫工事で何とか元旦開設に間に合わせた功績は大きい(とおだてておこう)。自分でも「何でこんなキツイ仕事を受けてしまったのか分からない」そうだ。彼の心に「何か」が引っかかったのだろう。

 その「何か」は今も継続していて、お互いにそれを確認するために今だにつるんで色々と「悪巧み」をしている。コイツはホントに「ワルいヤツ(褒め言葉である!)」である。

 

 写真の腕は確かで(と私が言うと怒られそうだが)、色々と教えてもらっている。このページの中でも、明らかにレベルが違う写真が混じっているが彼の撮影である。仙台で(というか東北で)これ程個性のある写真が撮れるカメラマンも少ないだろう。一旦付いた客は離れなくなる(と褒めておこう)。いやホントである。

この日は南澤さんのビデオクリップ的な短い映像を撮る、という事で来てもらった(この家は今彼のスタジオとして改装中である)。早速撮影準備にかかる。

 

プロのセッティングだから照明やらマイクやらでっかいパラソルやら何やらかんやら(何を使うか良く分かってない)を使って、カメラを引いたら道具だらけ、と言う場面を思い浮かべるかもしれないが、寺岸さんは夕方になりかけの暗い時刻にもかかわらず、照明を使わないで逆に深い影を利用して画を決めた。

南澤さんのちょうど真横よりやや上から光が当たり、半身に深い影が出来る。この光線をオランダの画家に因んで「レンブラント・ライト」と言う。別名「自惚れ光線」とも呼ばれていて、劇的な陰影ができるので「カッコよく」映るのである。

 

「セッティングは『引き算』なんだよ。」

 

「足せば良い」というものでは無いらしい。逆に「いかに引くか」にアタマを絞るという。なるほど。

サスガ師匠。カッコいい事をほざきなさる。

 

撮影時間は、多少の演出も入れて5分ほど。シタールはケースだけを置いて演出道具(兼機材隠し)として使い、弾くのはタンプーラとインドハープのみだ。

 

竹藪の中の日本の古民家に、インドからの瞑想的な音が緩やかに響き渡る。不思議と違和感が無い。この深い光のお陰だろう。プロに撮影してもらって南澤さんも感激している。

 

仕事が終わってオトコ仲間が3人。まだ明るいが、やることは決まっている。

私はこれからのアルコール摂取を迎え撃つべく台所へ入る。ぬか床も持って来ているし、さくらの湯の直販所で仕入れたネタもある。ぬか漬けはどんなサケにも合う万能のツマミである。

しかし今日の「目玉」は四国の友人から送ってもらった自家製の「ジャンボにんにく」と「新じゃが2種」のオリーブオイル炒めである。これでホッピーが進む事は間違いない。

「イッシッシッシッ!」こういう時の笑い声は何故か「イ行」になる。嬉しさと欲望の入り混じった音である。

にんにくやじゃがいもなど、根菜(正確にはじゃがいもは茎だが)を炒める時は焦りは禁物である。油断していると「外はコゲコゲ、中は生」という悲しいシロモノになってしまう。友人からもらった貴重な獲物でもある。

窓を開け放っていても、にんにくの蠱惑(こわく)的な香りがツマミを待つオトコ達の鼻を攻撃する。焦げない様に何度もひっくり返し、ようやく完成。軽く塩(塩竈の藻塩)と胡椒(老木から収穫しためっちゃ味の深いヤツ)で味を付ける。「ゼッタイオイシー」というヤツである。

 

「おい、若だんな、コレヤベェよ! 俺明日仕事なんだぞ!」

寺岸カメラから抗議の声が上がるが、じゃあ食わなきゃいいんである。ザマーミロ(結局にんにくはいつの間にか完食されていた。翌日どうなったかは知らない)。

野菜の塩揉みや前日の残り物のアレンジなどをマッハで作り場を繋いだら、汁物の制作に取り掛かる。今日は地元で作られた「まんじゅう麩」を使う。もう1時間程前から水で戻してあり、汁物に入れる準備はバッチリであった。

この「まんじゅう麩」は宮城県の県北で作られており、この地方ではお盆や法事の際には欠かせない食べものとなっている。汁を良く吸い込み、煮溶ける事もない。

さて、どんな汁物に入れようか? とスープの検討にかかる。と・・・

 

(・・・・・・・!!)

 

ヤっちまった。 麩を用意したのはいいが、肝心の「スープのネタ」を忘れてしまった。作れるのは味噌汁しかない。粉末にした鰹節と昆布はあるが、私の腕ではとても「禅的」な、「無味の味」になってしまう事は免れない。まあ、しょうがないか。

 

「おいこれ、味が何にもないぞ!」

案の定、寺岸カメラからまた抗議の声が上がる。全く美味くても不味くてもうるさい・・・じゃなかった、的確に指摘してくる方だ。

「いや、これ旨いよー!」

南澤さんから救いの手が差し伸べられる。サスガ天空人、この深い滋味を分かってらっしゃる。

 

そうなのだ。味噌は地元塩竈の手作り味噌、野菜も地物、出汁も天然、そしてここの水も旨い。料理人の「腕」はともかく、全て「素性の良い」素材達なのである。

「寺岸さん、あんたいっつもコンビニ飯ばっか食べてるから舌がおかしくなってんじゃないの? これ全部、天然素材なんだからね!」

南澤さんという味方を得て私は急に強気に出る。ゲンキンなものだ。確かに「良く味わえば」、とても体に優しい良い味がする。

卵焼きにマヨネーズをかける人に、この味は分かるまい。

 

料理が終わって、私も宴会に加わる。先程から、南澤さんと寺岸さんは世界旅行の話やここでは書けない話(イッシッシッ)で盛り上がっている。オレもマゼロ。

ホッピーの空瓶が増え、他の酒も減って来た頃、二人は色んな話でかなり盛り上がって来ており、私はいつも通りその様子を見てちびちび楽しんでいた。まだ外は明るい。

 

・・・ふと、南澤さんが意外な事を言い出した。

 

「弾きましょうかね。シタール。」

 

私は耳を疑った。

つづく