基礎知識編3:エゴのなりたち

 

「楽園」よりも、絵に描いた「オレ!」

楽園に居た頃、アダムもイブも幸せであった。

自分の「幸せ」に全く気付かない程に、幸せであった。

本当に、本質的に、先天的に、自然に幸せであった。

 

何故ならそれが「本来の人間」だからである。

 

「不幸」とは、極めて不自然な、宇宙の常識から言えば殆どあり得ない「奇跡」なのだ。

こんな「奇跡」が可能なのは「神」しかいない。「不幸」とは、「神の御技」なのである。

 

なので、この地球は宇宙的観光地として有名である。

何故なら、この宇宙では滅多に見られない「不幸」が見られる星だからだ。

今日も、一目「不幸」を見ようとこの地球を訪れている他星の人間がいた。

「いやぁ、やっぱりスゴいね、この星のマイナスエネルギーは!」

「この波動は、ここでしか味わえないよね。」

「うん、一体どうやったらここまで変な波動を生み出せるんだろうね?」

「それなんだけど、どうもここのニンゲン達には『エゴ』と呼ばれる特殊な器官があるらしいよ。」

「『エゴ』? 何だい、それは?」

「うちの長老様に教えてもらったんだけどね、これは神が作りたもうた装置で、その『エゴ』によって『苦しみ』というものを経験するという『偉大なる目的』があるんだって。」

 

「ふーん。良く分からないけど、その『エゴ』って一体どんな物なの?」

「長老様のお話だと、その『エゴ』というものがあると、『自分が神様の一部分である』という事を忘れてしまうそうだよ。」

「えっ! ・・・そんな事が出来るの?! どうやって??」

「普通の星では、みんな『自分が神様の一部』という事を分かってるから、やることはみんな『神への捧げ物』だよね。」

「うん、・・・というか、それ以外のことって出来るものなの?」

「『エゴ』があると、それが出来るらしいよ。」

「へぇ〜、それはスゴいね。」

 

「でしょう。さすが神様だよね。普通僕たちは、この神様から頂いた肉体や精神を、神様を喜ばせる為に使っているよね。」

「それが一番楽しいし、自然な事だと思うけど。」

「そうだよね。でもここではみんな、生まれてしばらく経つと『エゴ』という装置が働いて『自然』ではなくなってしまうんだって。」

「一体どうなっちゃうの?」

「長老様は、この『エゴ』という装置があると、『世界が逆さまに見える』と言っていたよ。」

「? 『逆さま』ってどういうこと?」

「普通の人間は、自分の行為を『神様』に捧げるよね。」

「だってこの自分は神様の一部だもの。」

「そう、僕たちは神様でもあるから、『自分自身』である神様の為に行為をするよね。自分の行為を自分自身に捧げている訳だ。当たり前すぎて普段考えもしないけど。」

「うん、強いて言葉にするとそうなるね。」

「でも、ここのニンゲン達は、自分の行為を『自分自身(=神)』に捧げるのではなく、『自分の形』に捧げるんだって!」

「『ジブンノカタチ』? 何それ?」

 

「普通の星の人間は、自分の『本質』は『神』という事を知っていて、頂いた『肉体』や『精神』は本質である神が『形』として現れた、ただの『道具』に過ぎないという事を分かっているよね。」

「うん。」

「でもここのニンゲン達は、その『形』に過ぎない『肉体』や『精神』を『自分の本質』と思い込むらしいよ。」

「えっ? こんなちっぽけな、末端の道具に過ぎないものを『自分の本質』と思っちゃうわけ?」

「どうもそうらしい。ここのニンゲン達は、そうやってすっかり『神様』の事は忘れちゃうんだって。」

「へぇ〜、面白いねえ! じゃあここのニンゲン達は何の為に行為をしているの?」

 

 「長老様は、地球のニンゲン達にとっての『神』とは、『自分の名前』の事である、と言っていたよ。」 

「どういう事?」

「つまり、ここのニンゲン達は、普通は『自分自身(神)』に捧げる行為を『自分の名前』に捧げているんだって。」

 「『自分の名前』ねえ? それはこの世界で行動する時に便宜上付けられただけのものだよね?」

「そう、ただの個体識別記号に過ぎない。でも、『エゴ』と言う装置があると、この『個体識別記号』を『神』だと思い込み、それに一生懸命尽くしてしまうみたいだよ。」

「一体どうやって『個体識別記号』に『尽くす』の?」

「ここではその事を『名を上げる』と言っているみたい。各個体で色々と比べあって『競争』というものをやっているらしいよ。この世界では、その『競争』で上になった人が『神』扱いをされるらしい。」

「キョーソー?」

「そう、『競争』というのは全く本質的でない何かの基準をでっち上げて、その基準により近い方が上位である、というゲームらしいよ。」

「例えば?」

「一番有名な『競争』は、『所有している物の貨幣価値の総額競争』かな。これには地球の全ての人が注目してるし、注目度が高い程『エゴ』は喜ぶ様に出来ているらしい。これの上位者は『金持ち』と呼ばれて、その『個体識別記号』である『名前』があちこちに知れ渡る様になる。地球のニンゲン達は、これを一生の目標にしている人が大勢いるみたい。」

 

「へーぇ、変わってるねぇ! 『個体識別記号』が知れ渡って、何かその個体にいい事があるの?」

「分からない。多分何にもないと思うよ。だって、もし君の『個体識別記号』が我々の星の人全てに知れ渡ったとしたら、君はどう思う?」

「何とも。 そんな『自分の形』がどうなろうとも何も関心はないよ。それより、『自分の本質(=神)』の為に今日何をしたかの方が遥かに大事だよね。」

「うん、普通の星の人間はそうなんだけど、この地球のニンゲン達の持っている『エゴ』は『自分の形』である『名前』が他の個体達に知れ渡ると喜ぶらしいよ。」

「へーぇ。ひたすら変わってるね、この地球は。」

「そう、そして地球のニンゲンは、『自分の形』の為に『自分の本質』をどんどん傷つけているらしいよ。」

「えぇーっ! そんな事出来るものなの?! それって『悪魔』でも出来ないんじゃ・・・」

「この『エゴ』という装置はそれほど素晴らしく巧妙に作られているんだね。神様もひどい『イタズラ』をなさったと思うけど、それが神様の御意志でもある。我々の想像はとても及ばないよ。」

 

「うーん・・・・・・」

「どうしたの? 考え込んじゃって。」

「いや、この地球という星の『ニンゲン』のイメージが浮かんで来たんだけどね・・・」

「どんなイメージ?」

「いや、こういう・・・・」