基礎知識編4:エゴのはたらき

 

二人とも、「エゴ」に興味津々。

「なるほど。これはとても象徴的なイメージだね。地球のニンゲンたちを良く表していると思うよ。」

「そうでしょ。こんな風に生きていたら、『不幸』にならない方がおかしいよね。」

「君はさっきエゴの事を『世界が逆さまに見える装置』と言っていたね。」

「うん。長老様がそう言ってたんだ。」

「何が『逆さま』なんだろう?」

「多分、こういう事だと思う。普通の星の人々は、人間の上に神様がいて、人間は神様の一部分と言う事が分かっているよね。」

 

「うん、それが事実だからね。」

 

「でもこの星のニンゲン達の感覚だと、一番上に『自分の形』があってその下に『全世界』がある。神様は居場所すらない。」

「・・・・君の言葉を言い換えると、普通の星では自分の肉体や精神、つまりこの世界に現れた『自分の形』を使って『神の一部としての、本来の自分』の為に行為をするけど、地球のニンゲン達は神の一部でありながら『自分の形』を使って『自分の形』の為に行為する訳だね。」

「そう、ここのニンゲン達は自分の肉体と精神を使って、『外見』や『評価』や『生理的欲望』などの『自分の形』に奉仕しているんだ。普通の星で『神様』に当るものがここでは『自分の形』なんだよ。」

「『ここのニンゲンにとっての神は、自分の名前である』と言う長老様の言葉はこれを表しているんだね。『形』には必ず『名前』が付いてくるからね。『〇〇の外見』『〇〇の評判』『〇〇の持ち物』とかね。ここでは全てのニンゲン達がそんな風に『自分の形』に奉仕しているの?」

「極僅かに『自分の本質』に奉仕している人がいるけど、そんな人はここでは普通は異端児扱いされて排除されちゃうんだ。だから、ほぼ全ての人が『自分の形』に奉仕しているし、社会のあらゆる事がそれを前提に作られているんだ。」

「はぁー! 神様もすごい星を作ったもんだなぁ。ニンゲンに『エゴ』を植え付けて、さらにその『エゴ』を社会全体で守っている訳だね。驚きで口が開きっぱなしだよ。」

「・・・これを聞くと君の口はもっと大きく開くと思うよ。『エゴの喜び』というのは、我々の感じる『本来の自分の喜び』とは全く逆だという事だけどね。」

「どういう事?」

「神様がなんでこんな『異常過ぎる』装置を作ったのか、とても不思議だと思うだろうけど、この『エゴの喜び』の一番の特徴は、『他を害する事によって成り立つ』という事なんだ!」

「ええぇーーっ!!!」

「・・・・・・・。」

「ショックを受けている様だね。無理もない。我々がもし『他を害した』としたら、それは『神様を傷つけた』事と同じだからね。それは同時に『神である自分も傷つけた』事にもなる。そんなこと強制されても出来るものじゃないよね。」

「・・・・・・・僕は、ちょっとだけ神様が嫌いになってきたかも・・・。この『エゴ』という装置はあまりに残酷過ぎるよ。」

「そうだよね。例えば、この『エゴ』という装置が一番喜ぶ事の一つが、『競争に買った時』なんだけど、『競争』とは必ず『敗者』が出る仕組みになっている。」

「『敗者』が無ければ『勝者』も無いもんね。」

「そう、その『敗者』は負ける事によって当然何らかのダメージを負っているし、また他人に負ける事は大きな『エゴの苦しみ』でもあるんだ。」

「うーん、あまりに異次元の世界なので想像が追いつかないよ。何か具体的な例はない?」

「そうだな、一番分かり易いのは地球で行われている『格闘技』というものかも知れない。」

「『カクトーギ』って?」

「驚かないでよ、地球のニンゲン達はお互いに相手の肉体を傷つけ合って、より多く相手を傷つけた方が勝ち、という『競争』があるんだ。」

「ちょっ、ちょっと待って。まず『他の肉体を傷つける』こと自体に僕たちは耐えられないよね。」

「うん、自分の肉体が傷つく以上にすごい苦しみを感じると思う。」

「・・・それなのに、『エゴ』があるとそれに『喜び』さえ感じてしまうの?」

「・・・うーん、多分、『他の肉体を傷つける』事自体が喜びじゃなくて、それによって『相手の肉体を支配する』事が喜びなんだと思うよ。」

「『相手を支配する』ってそんなに嬉しい事かなぁ? 僕だったら、『僕の言う事なら何でも聞く人』が居たら嫌だな。そんな人には『僕の言う事じゃなくて、自分の本当にやりたい事をやってみようよ。』って言うと思うなぁ。」

「そこが『エゴ』の良く出来ている所で、ここのニンゲン達は『本来の自分の声』よりも遥かに大きく『エゴの声』が聞こえるように作られているんだ。」

「うーん、・・・・・僕は段々神様に腹が立ってきたよ。」

 

「君はここ地球のニンゲンに余程同情しているみたいだね。」

「だって、可哀想過ぎるもの。」

 

「それはそうだけど、この地球も神様の創ったものだから必ず『意味』はあると思うよ。」

「そうかなぁ?」

「うん、その『意味』も長老様から聞いているけど、これは後で話すね。」

「気になるなぁ。」

「まあ、ここで一度話を戻すよ。その『格闘技』では二人のニンゲンがお互いを傷つけ合う訳だけど、その傷付け合いの中で『ここまで傷付けた方が勝ち』と言うルールがあって、それを先にやった方が勝者と言う事なんだ。」

「そうしないとどちらかの肉体が死んでしまうからね。」

「でも昔は本当に『どちらかの肉体が死ぬまで』と言う格闘技もあったみたいだよ。」

「・・・段々驚かなくなってきた。『エゴの常識』は全て『我々の常識』をひっくり返せばいいんだよね。」

「そう、段々分かってきたね。その『格闘技』で勝った人はものすごく高揚して喜ぶ。そしてそれを見ていた人も、その勝者を賞賛するんだ。」

「まるで悪魔の集会所だね。」

「しかも、その勝者には莫大な金銭が与えられる事も多い。だから格闘技で勝者になればエゴも満足するし、肉体の保持や快楽の追求とかも出来る訳だ。」

「正に、『社会全体がエゴの維持の為に出来ている』訳だね。でも、それだと『勝った人』は『エゴの喜び』に浸れるけど、『負けた人』はどうなるの?」

「『負けた人』は『エゴの苦痛』を受けると同時に、勝っていれば受け取れるはずだった金銭も得られない。場合によっては自分の肉体の保持も危うくなるかも知れない。」

「それは酷いね。そんな人が増えたら社会自体がおかしくなっちゃうね。」

「そう、正にそれ。例えばこの『ボクシング』と言う競争では、実際にそれだけを職業として肉体を保持できる人は殆どいないんだ。一国内で一番になっても足りなくて、世界で一番位になって初めてある程度の金銭が得られるみたいだよ。」

「じゃあ、勝者一人に対して敗者の数はどの位なの?」

「職業としてボクシングをやっている人は2万人位で、その中で『チャンピオン』と呼ばれる『世界一』の人は分野別で大体40人位だね。」

「じゃあ、勝者一人に対して敗者は500人ってこと?」

「そうだね。この『ボクシング』という競技は大量の『敗者』を生み出すシステムになっているんだ。」

「そんなに大量の『敗者』がいるから、この地球の波動はこんなに『ヘンテコリン』なんだね。地球のニンゲン達は他にはどんな『キョーソー』をしているの?」

「ボクシングの様に肉体そのものの優劣を競う『スポーツ』と呼ばれる競争や、自分の知識と知能が他人よりどれだけ優れているかを競う『学問』という競争もある。これらの特徴は全て『勝ち負け』や『数字』ではっきりと比較できるという事さ。地球のニンゲン達は、幼い頃から『学校』と言う建物に閉じ込められて、この『競争』を徹底的に教え込まれる。」

「そんな恐ろしい施設があるんだ!」

「そう、これは地球の殆どの子供達が通っている施設なんだ。ここで子供達は初めて『沢山の、別の同年代の個体』に強制的に出会わされ、『他人と自分を比べる事』を覚え、『競争で他人に勝つ』事の喜びと『他人に負ける』事の苦しみを徹底的に味わわされるのさ。」

「なんて残酷な施設なんだ! 正に『社会全体でエゴを育てている』訳だね。」

「その通り。そんな異常な施設であるのに、殆どのニンゲン達はその『異常さ』に気付いていなくて、学校に行かない子供達は実に冷酷に扱われているよ。」

「なんて可哀想なんだ! そんな恐ろしい施設なんか絶対に行かない方がいいのに!」

「その通りだけど、この『学校』に行かなかったニンゲンは成長しても一生社会から酷い扱いを受けるシステムになっているのさ。」

「へぇ〜! いや、実に『エゴの維持・成長』の為に良く出来ている社会だねぇ。」

「本当、感心するよ。全ての社会システムが『エゴ』を前提に作られている。ここでは『エゴ』が無いと逆に生きにくくなっているんだ。」

「全世界規模の『エゴ養成所』だね。この星では神様が作りたもうた『エゴ』を大切に育てている訳だ。」

「そういう事になるね。ここは宇宙でも特異な『エゴの実験場』なんだ。」

「『ガッコー』が終了した子供達はどうなるの?」

「うん、それからは学校とは比べ物にならない位激しい『競争』に巻き込まれる事になる。この『社会』と呼ばれるシステムは、全て『疑い』を基礎にして作られているんだ。だから、まず最初に会った人は『疑われる』。だからその人は自分にかけられた『疑い』を自分の言動や持ち物で解消しなければならない。それを通過して、初めて社会的に認められる、生きて行くことが出来る訳だよ。」

「へーぇ、何で『疑う』必要があるの?」

「それは『エゴ』が人格の基礎になっているからだね。この『エゴ』と言うものは、『自分の形』、即ち自分の持ち物、名前、肉体、精神などが『全世界』や『全人類』よりも大切なんだ。だから『エゴ』のままに行動したら必ず他人を害する事になる。だからまず『この人は自分を害そうとしている。』と疑わなければならないのさ。」

「うーん、やはりことごとく我々の常識とは正反対なんだね!」

「そう、普通の星の人間は、全て『神』を通して繋がっているから、『信頼』が基本態度になるよね。当たり前だけど。」

「言われてみるとそうだね。いつも『信頼』している。僕は他の人々を見ると、必ずそこに『神様』の姿が見えるよ。考えるのは『どうやってこの人を喜ばせようか?』という事だけだよね。」

「普通はそうだよね。でもここ地球では全く逆なんだ。この世界でのニンゲン観を良く表した言葉があるよ。」

「どんな言葉?」

「『他人を見たら泥棒と思え』という言葉さ!」 

「ハハハハ! いやー、『エゴ』って凄いわ。ここまで物事を『逆さま』に見せてしまうなんて!」

「本当に見事な装置だよ。僕は逆に神様を尊敬するね。」

「いや、でも『エゴ』を入れられた本人達の事を思うと、僕は胸が痛いよ。」

「うん、それは全くその通りで、この『エゴ』を入れられた地球のニンゲン達は皆酷い苦しみを味わっている。しかも、殆どのニンゲンがその苦しみの原因を全く知らないから、解決しようもないのさ。」

 

「『エゴ』を入れられたニンゲンの『苦しみの原因』って何?」

「それはね、ここのニンゲン達には『エゴ』と言う装置が付けられて、それに従って皆行動しているけれども、そんなニンゲン達でもその『本質』は『神』である、という事なんだよ。」

 

「それはそうだね。この世界自体が『神様の一部』だもの。」

 「そう、でもこの『エゴ』という強力な装置のお陰で、この世界では『神はいない』というのが常識になっていて、それを前提に社会が作られているんだ。」

「・・・おお、神よ! あなたはなんて恐ろしい星を作ったんだろう!」

「正に『Oh、My God!』な世界だね。そんな『神はいない』という前提の社会で『神』が暮らしているんだから、苦しくならない訳が無いよね。」

「じゃあ、この世界で苦しんでいるのはニンゲン達の『神』の部分なんだね。」

「そう。」

「・・・そうか。段々分かってきたぞ。『神様の御意志』が。」

「気付いて来たみたいだね。そう、ここではその『苦しみ』こそが神の存在の証明なんだ。」

つづく