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呪われた若おかみ 1

このシリーズは、私(若だんな)とヨメ(若おかみ)が交互に書いていく、という形式になる。若だんなの記述には左の「三マーク」、若おかみの記述には赤い落款マークが付くので区別されたい。

 

実際に「呪い」を受けた人間と、それを側で見ていた人間による手記である。

この手記によって、実際に「呪い」が存在するということ、それにかかるとどうなるのか、対処の方法はあるのか等、実際的な事項に加えて、スピリチュアル界で良く見られるいわゆる「ポジフリ」の弊害についても触れていきたい。

 

1. Kさんが来る

旧友の舞踏家であるMさんが、1週間くらい泊めてくれないかと言う。東京で公演が2回あるのだが、1回目と2回目の間の何もない日が10日ばかりあるらしい。カネのかからない暇つぶしに、バスで宮城県まで来るようだ。背は高いが邪魔になる人ではない。「一人で来るの?」と聞くと、なんだかはっきりしない。連れがいるようないないような。

ちょうどいいタイミングで、塩竃市が一部の文化事業に助成金を出すことを知った。認められれば塩竃市公認事業として扱われる。「Mさん、こっちで踊らない?」。いい暇つぶしができた。

コロナ禍で有観客公演はやりにくい。塩竃市が出した条件にも感染対策が入っている。カメラマンのTさんを誘ってみよう。助成金で撮影費用もなんとかなるだろう。Mさんを被写体にして映像作品を作る計画を立てた。

 

2021年9月6日深夜、若だんながスマートフォンをいじり始めた。しばらくして「もう疲れた。代わって」と言う。ずっとメッセンジャーで誰かと話していたようだ。

 

相手はMさんの弟子の一人、Kさん。

2019年の夏にも彼女はうちに滞在した。あの時は驚いた。Mさんが末娘を連れて来るというので、二人分の用意をして待っていた。迎えてみたら、もう一人女性が。「あのな、この女の子がな、付いてきちゃったんや」と呑気にMさんが言う。女性はにこにこしている。一人増えたのなら知らせてほしい。そして誰? その上踊ると言う。父娘公演じゃなかったの? セッティング全部、父娘デュオにしちゃったよ? 突然でごめんねも何もなく、Kさんはうちで過ごし、ライブ会場で踊った。

 

メッセンジャーが私に繋がれて、Kさんとの会話が始まった。しかし会話にならない。

KさんはずっとMさんに付いてきているようだ。「来てもやってもらう仕事ないけど、いいの?」と聞くと、「いい」でも「悪い」でもなく、「踊る」と言う。一人で勝手に踊るのならいいが、「Mさんと二人で作品として踊る」と言ってきかない。撮影もしてほしいらしい。普段気軽にやっているライブなら飛び込みがあってもいいけれど、今回は公認事業として計画書も出しているのだから、そういうわけにはいかないのだと、何回言っても伝わらない。

「ふたりおどり旅なんです!」「二人の!」「二人でないと!」

「Kさんがうちに来るのは一向に構わない。ただ今回はMさん一人に踊ってもらう仕事だと理解してください」と言うも、「FBとかで見ているでしょう? ふたりおどり旅なんです!」「二人同宿の決まりなの! 部屋も一緒!」「私はダメというならば、私がお金を出して二人でどこかに泊ります!大赤字になるけど!」

私もうんざりした。もうバスに乗ってるんだから、仙台までは来るんだよね。二人一緒なんだね。不毛な会話で嫌な気分になっちゃったけど、うちに泊まる? こっちはどっちでもいいよ。Mさんと相談して決めて。どこまでもKさんは決めない。「仰せの通りに」と言う。しかしこちらの言葉は受け付けない。

とうとう朝になった。「こんな時間まで付き合わされた」とKさんに言われた。

仙台へ迎えに行った若だんなが二人を車に乗せて帰る頃には、一晩中放たれたKさんのメッセージが、すべて削除されていた。