
三陸の海と
アイラの潮風
桜の春に
社の街で
海産物、海の肴に合うサケは、意外に少ない。
「刺身には日本酒でしょ!」
とは良く言われるが、日本酒だって何でもいい訳じゃないのだ。
サケの基本法則の一つ(私が勝手に作った)に、「山は山、海は海」というものがある。
山の肴には山で造ったサケ、海の肴は海岸近くで醸したサケが良く合う事が多い。もちろんその土地の肴を地酒で、というのが最高の相性である。

宮城や岩手の三陸沿岸では、春になると「生めかぶ」というものが店先に並ぶ。
これを刻んでさっと湯通しして食べたら、もうスーパーのパック詰めのめかぶは食べられない。
口に入れた途端に潮の香りが弾けて鼻を突き通っていく。コリコリとした食感が歯に心地良い。
その味と香りと食感は「鮮烈」という表現がピッタリ来る。
さて、この「鮮烈さ」に太刀打ちできるサケは何だろうか?
試しに内陸で作られた地酒を合わせてみる。何だかボヤボヤしてめかぶの鮮烈さが台無しだ。
次に我が地元の旨しの安酒、「浦霞 栄冠」を合わせてみる。文句ない。浦霞ならではの酒質の高さが、めかぶの味を引き立てる。
では、同じ海沿いならボウモアはどうだ?
このアイラの海岸で醸されたウィスキーには、潮の香りがたっぷりと含まれている。そのキレ味は鮮烈そのもの。
生めかぶの新鮮な香りが鼻腔に残っているうちに、ボウモアを口に含む。
磯の香りをたっぷり含んだぬめりをピリッとしたアルコールが洗い流していき、めかぶに負けない荒々しい潮の香りが鼻を抜けていく。
これは旨い。
浦霞はめかぶの味を優しく包み込むが、ボウモアはまるでめかぶと一騎討ちをする様な「鮮烈さの共演」である。

ここ数年、例の疫病ごっこのおかげで花見がまるで出来ない。気晴らしに、先程地元の鹽竈神社で桜を見てきた。
この神社には約40種類100本以上の桜があり、そのうちの多くが今満開になっている。見物客はそれぞれ微妙に違う様々な「桜色の共演」を見にここを訪れる。今日は平日なので客足も少なく、ゆったりと「桜のトンネル」を楽しめた。
ヨメと二人、体の中に桜のいぶきを吸い込んで、その余韻で「時間差花見」と称して昼から家飲みを敢行する。
社(やしろ)の街の小さなちゃぶ台の上で、三陸の海の深さとアイラ島の荒々しい潮風が一騎討ちをする。
その鮮烈な剣技の共演を、春の桜がのんびりと見下ろしていた。
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若おかみ (火曜日, 19 4月 2022 12:36)
めかぶ漁師さんに教わった調理法。
生のめかぶを刻みます。フードプロセッサーを使うと楽。その間、大きめの鍋でお湯を沸かします。沸いたら火を止めておきます。
刻んだめかぶをザルに入れ、鍋のお湯に浸けます。理想温度は70度。なので沸騰してないお湯に冷たいめかぶを浸けてOK。
みるみる緑色になります。かき混ぜて全部緑色になったら、お湯から上げて出来上がり。
くれぐれも茹でてから刻もうとしないように。ヒサンなことになります。