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どこからお話ししましょうか 柳家小三治 (oo-kami)

幼い時、寝る前の私に「おはなし」を聞かせたのは父でした。本を読むのではなく、布団に入った私に手真似顔真似見せながら。とは言ってもレパートリーは「桃太郎」「一寸法師」「寿限無」の三つだけです。二日おきに同じ話を聞くのです。それでも毎晩ケラケラ笑って、眠りにつきました。何がそんなにおもしろかったのか。「桃太郎」も「一寸法師」も原作とは少し違いました。いくらかアレンジされていました。だからといって毎晩笑い転げるほどの話芸だったとは思えません。もしそうだったら教師なんか辞めてコメディアンになった方が、我が家は裕福になったことでしょう。

「寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末…」二人で唱えながら笑いながら過ごした夜が、私の一番古い思い出かもしれません。

 

バカボンもドリフターズも楽しむ父と違って、母は生真面目。漫画も教育上よろしくないと思ってか、買ってもらうことはありませんでした。父の本棚を眺めていたら「古典落語全集」と書かれた文庫本が数冊。「寿限無ってたしか落語だったよね」と思い、一冊手に取りました。その本には「寿限無」はなかったのですが、「牛ほめ」という分かりやすい話を読んでお腹が痛くなるほど笑いました。

漫画がなくてもつまらなくない(友達から借りて読みましたが)。意味も分からず「明烏」を読み、「子別れ」に泣き、とうとう「寿限無」を探し当て…。

テレビの落語も見ました。二代目林家三平、二代目桂枝雀、五代目柳家小さんは永谷園のおじいちゃん。

 

生きている合間合間に落語があります。本、ビデオ、テレビ、たまに寄席。今はYouTubeでも楽しめます。

十代目柳家小三治の噺を聞くと、その夜は安らかに眠れそうな気がします。この人の「かんしゃく」が好きです。